準備編
さて、前回はソフトの選定から必要となる機材、配信に向けた機材構成などについて書きました。今回はリハーサルや本番に向けて各種セッティングや参加者・視聴者に向けて事前に伝えておくべきことなどについてお伝えいたします。
セッティング
円滑な配信に向け、マイク、カメラ、zoomなどのセッティングが必要になってきます。
マイク
ある意味カメラよりも重要なマイク。みなさんもカラオケや会議などで「キーン」とか「ボー」という耳をつんざくような音「ハウリング」を聞いたことがあると思います。
オンライン発表会では視聴者はイヤホンで聴いていることも多く、その時にハウリングが発生するとかなり迷惑となります。ですのでリハーサルを通してハウリングが発生していないかしっかり確認する必要があります。
さて、ハウリングはどうやって発生するのでしょうか。基本的にはマイクがスピーカーから拾った音をアンプが増幅してさらに大きな音をスピーカーが鳴らす。そしてその音をまたマイクが拾って拡散して…という、マイクーアンプースピーカーでループが出来上がることでハウリングが発生します。
マイクセッティングを行う際は、同じ空間にあるスピーカーの音をマイクが拾わないようにスピーカー音量を下げたり、エコーキャンセル機能が搭載されたスピーカーを利用したり、全員イヤホンマイクをつけるといった工夫が必要となります。
また、視聴者が話者の声を聞き取りやすいようにマイクのレベル調整も忘れずに行なっておきましょう。話者が複数いる時は、その人のしゃべる声量を想定して話者全員が一定の音量で聞こえるように調整しておくと良いです。
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カメラ
・レンズの焦点距離
カメラについては、前回も触れた通り高品質なカメラを用意した方がベターです。ただ、(特にレンズ交換式カメラを使用した場合)レンズの焦点距離によって顔の形は変化してしまいますので、35mmレンズ換算で70mm〜135mmあたりのレンズを使用できればベストですね。
ちなみにこちらはアメリカのフォトグラファーStephen Eastwoodさんが各焦点距離でポートレートを撮った比較画像。
画面左上から右下に向けて望遠から広角へと焦点距離が変化していきますが、焦点距離が短くになるにつれ手前(鼻)が大きく、奥(頭・髪)が小さく写るように変化します。この写真を見ると最低でも50mm以上の焦点距離で写した方がきれいですね。
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・カメラの位置
カメラの位置は目の高さよりも若干上にする方が見栄えが良くなります。ですのでカメラは三脚や何らかの台に乗せることをお勧めします。
・背景および部屋の環境
カメラの位置が決まったら次は背景。
当然ですが背景はごちゃごちゃしたものが見えないよう注意。会議室などであれば大抵は大丈夫ですが、オンライン発表会となると自宅などから参加する話者も出てきます。特に自宅などだと壁だけでなく、近くの窓から強い日差しが入ってくる(夜のミーティングで点滅するネオンに照らされたら想像するだけで最悪ですね)可能性もありますので、本番と同じ時間帯に強い光の入ってこない明るい部屋で、背景がシンプルな場所を見つけておいてもらいましょう。
ぷくおが携わった発表会では、リハーサルの時は問題なかったのが、本番直前になったら強烈な日差しが差し込み、カーテンでも明るさを抑えきれずに話者に当たり、服や顔のハイライトがバーチャル背景でエラーを起こして結局バーチャル背景の使用を断念したという経験があります。
・照明
オンライン発表会は顔がアップで映る機会が多くなります。ですので血色の良い健康的な表情に映るよう、近くにビデオ用ライトを置くことをお勧めします。
ぷくおが行なった時は女性の前だけライトを置いたのですが、やはり照明に照らされた女性の顔は美しく、照明を置いていなかった男性陣はなんだか怖い表情になってしまいました(笑) 次にやる機会があれば最低1つはライトを設置し、部屋の照明の具合によっては反対側からも補助ライトを当てたいと思います。
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・服装
厳密にはカメラ機材ではありませんが、服装は背景と馴染んでしまうことがないような色の服を着てもらいましょう。特にバーチャル背景をグリーンバックを利用しないで白い服だと背景用画像が服にも乗ってしまいます。できればこちらも事前にチェックしたり、万一に備えて無難な服を主催者側で用意しておくといいですね。
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zoom設定
zoomでは、セキュリティ強化の一環としてミーティングにパスワードをかけたり、ミーティング開始前に視聴者がログインして待機してもらう待機室機能などがあります。発表会の性質によって必要な機能を利用するよう設定しましょう。
パスワード
パスワード設定ですが、こちらは2020年6月現在新規ミーティング設定時に自動的にONとなっていて、かつ参加者に通知するミーティングURL内に埋め込まれているため、特に意識することなくパスワードがかかっています。
待機室
ホスト(zoom管理者)の設定でミーティングの待機室をオンにすると、参加者がミーティングにアクセスするとホストの許可なしには参加することができません。
とはいえ、参加者のzoom名を事前に知らせてもらっていないと、結局は誰彼構わず一度承認せざるを得なくなっていしまいます。
そういった悲劇をなくすためにも、例えば参加申込書にzoomのアカウント名を記載してもらうか、社名・氏名といった形で参加してもらうなどの事前周知が必要だと感じました。なお、待機室の画面はロゴ、タイトル、説明などがカスタマイズできますので、待機室で社名・氏名の変更を促すのもいいですね。
また、待機室に入ってきた参加者を承認するのも人数が多くなると結構時間を取られてしまいます(誰彼構わず一斉承認であれば簡単ですが)。ホスト側は承認にかかる時間も考慮して、ミーティングの開始時間を設定する必要があります。
話者への事前周知
話者全員に対して
・マイクについて:通常の発表会などと一番違う点は、ホスト側(またはスイッチャー)が作業しない限りマイクがミュートになっていることです。もちろん1箇所からの配信で、常に1人が話すというのであれば問題ありませんが、司会と話者の2名というシンプルな発表会でもハウリング防止のために話していない人のマイクはミュートにするはずです。まずはその点を伝え、話す際は必ずミュートを解除してから話すようにお願いしましょう。
・画面切り替えにタイムラグが発生しやすい点について:例えば司会から振られてマイクをONにして話し始めようとしたのに画面が切り替わっていなかったということも十分あり得ます。
そういったトラブルを防止するためにも、視聴者がどういった画面を見ているのかが客観的に見えるモニターを設置したり、スタッフがカンペ出しをしてあげるとスムーズな進行に役立つはず。
司会に対して
インターネット回線を利用するオンライン発表会ではトラブルがつきもの。違う拠点の中継がすぐに繋がらなかったり、話者のマイクがミュートになっていたり、カメラが切り変わらなかったり、資料や音楽が出てこなかった/不要な場面で出てしまった。などなど。
そういったトラブルが発生した時に、司会が落ち着いて行動しているとかなり救われます(実際救われました)。ですのでトラブルが発生した際には「申し訳ございません、ただいま回線の状況が悪いようです」とか「申し訳ございません、資料が出るまでもう少々お待ちください」といった、代表的な場のつなぎ方やトラブルが出やすい事象をを何個か伝えておいた方がいいでしょう。
参加者(視聴者)への事前周知
多数の参加者がいて、それぞれのマイクがONになっていると収集がつかなくなります。マイクミュートはホスト側でも操作できますが、なぜか勝手にマイクONにしてくる方がいらっしゃいます。発表会の冒頭でお願いするだけでなく、途中でONにする方が出てきたら司会からマイクミュートをお願いしましょう。
また、参加している方の顔は見える必要はありません。おそらくzoomの回線が耐えられるとは思いますが、不要なトラブルを招かないためにもビデオはオフにしてもらいましょう(逆に参加者の周囲にある機密情報などが写ってしまったら参加者にとっても不利益となりますし)。
今後書く予定の当日編で触れる予定ですが、質疑応答についても主催者側でどのように進行するかを考え、参加者に対しても質問の方法について周知しておきましょう。
素材提供
せっかく実施した発表会。ニュースに取り上げてほしい場合は終了後なるべく早い段階での素材提供が必要です。
zoomではミーティング模様を録画することができます。この機能はホスト側が許可すれば参加者でも利用可能となります。ぷくおもこの映像を配布しようとしてzoomのサービス規約を見たところ、若干分かりにくい文章となっていました。
それがこちら。
e.使用上の制限お客様は、サービスまたはサービスが生成したレポートやデータをいかなる目的においても、再現、転売または配布することを、その行為を許可するZoomとの別途の合意契約を結んだ場合を除き、固く禁じられています。お客様は第三者に対し、お客様が購入したサービスの使用、サービスから入手したコンテンツ(お客様が作成したコンテンツを除く)のウェブサイトへの表示または公開、サービスからの収益生成、あるいはサービスに類似したサービスや製品の開発、生産または宣伝への利用を、提案または行わせないことに同意します。
(2020年6月11日現在)
主催者側がzoomに送信した映像を元にzoomの録画機能によって生成されたデータは、zoomとの合意契約を結ばない限り転売または配布していいのか、非常に悩みます。録画機能というサービスで入手したコンテンツですが、元はと言えばお客様(主催者側)が作成したコンテンツになるのかが不透明で、zoom側に問い合わせを行ったものの未だに返答がない状況です。
このため、ぷくおが携わった発表会では参加者に勝手に映像を配布されるのを防ぐために録画機能を許可せず、さらに配信用映像を撮るため別途ビデオカメラを用意するという手間がかかりました。
zoomの評判を下げることにはならないので配布しても大丈夫だとは思いますが、現状はこのような状況でした。
次回
とりあえず今思いつく準備の内容をいろいろと書かせてもらいました。次回はいよいよ本番当日。最終チェックやトラブル防止のためにできること、さらに機材トラブルが発生した時の備えについて書いていきたいと思います。
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