2021年6月末に発表されたメルセデスベンツCクラスの最新モデル「W206」のステーションワゴンモデルにようやく乗ることができました。
先代・W205の前期型ステーションワゴンに乗っていたぷくおとしては新型モデルの出来栄えが気になるところ。先代モデルに乗っていた中で気になっていたのはアイドリングストップから復帰する際のショックや後席の狭さ(ワゴンだったので頭上空間はセダンに比べて広いものの、足下周りはもう少し広い方がいいと感じました)。そして運転時の右ミラー周辺の死角の多さ。これらがどのように改善されているのかも気になります。
新型Cクラスはさらに精度を高めた安全運転支援システム、テスラのようなタッチ操作可能な大型センターディスプレイ、ARナビゲーションシステム、片側130万画素を誇るDIGITALライトによる効果的な夜間の視界確保などが特徴。
4751mm×1820mm×1455mm ホイールベース:2865mmとなっていて、先代モデルに比べて全長が46mm、全幅が10mm、全高が5mm。そしてホイールベースが25mm大きくなっています。
エクステリア
デザインは現在の思想である「Sensual Purity(官能的な純粋さ)」を纏い、ラインやエッジが大幅に削減された滑らかなもの。W205世代の時と同様、ぱっと見Sクラスのように見えますし、W205の基本的なラインは踏襲しているようにも見えます。
試乗車はAMGラインだったのでエアロパーツが付いているのですが、特にサイドスカートがついていることもあってとても車高が低く感じます。
また、今まではAMGモデル専売だったパワーバルジ(ボンネットの膨らみ)が備わっているのが特徴。運転席に座るとこのパワーバルジが目の前に見えてちょっと特別な車に乗っている感じも受けますし、車線内の自車位置を維持するのにも便利でした。
細かいところを見てみると、フロントバンパーの両脇はきちんとエアを取り込み、フロントタイヤ横に空気を流す構造になっていて好印象な反面、マフラーは完全なダミーになっているのはちょっと微妙なところ。またドアハンドルはSクラスのようなハンドルが走行時にボディに格納されるフラッシュドアタイプではなく、普通のグリップドアとなっています。
ホイールはAMGラインではフロントに225/45R18、リアに245/40R18のタイヤを履いているのですが、ホイールは空力に力を入れたデザインとなっていて、せっかくのフロントの対抗ピストンキャリパーの姿があまり見えないなど、正直格好良いとは思えませんでした。なお、履いていたタイヤの銘柄はグッドイヤーのイーグルF1アシンメトリック5 MOタイヤ(メルセデスベンツ承認モデル)で、非ランフラットタイヤとなっていました。
ヘッドライトは前述の通り130万画素のDIGITAL LIGHTとなっていて、法規制で縛られないヨーロッパでは前方の道路に警告シンボルを投影するといった新しい機能が用意されているものの、日本では高精度のマトリクスヘッドライトとしての機能しか使用できない状況です。
そんなヘッドライトにはシャープなデイライトがヘッドライト上部に備わっている他、ヘッドライト内にも片側に1つの明るく光る輝点が設けられています。なお、Sクラスではこの輝点が3箇所、Eクラスでは2箇所設けられていて、似たようなデザインでも昼夜を問わずクラスを(知っている方であれば)分別できるようになっています。
インテリア
外をぐるっと見回したところでようやく中へ乗り込みます。現Sクラスから導入された大きなセンターディスプレイと、タブレットが置かれたようにシンプルなメーターディスプレイが注目されていますが、シートも先代モデルとは大きくデザインを変えよりモダンに。
試乗車はファブリックシートだったのですが、先代モデルよりも気持ちゆったりしたようにも感じられます。なお、レビューであまりよく言われることのない新しいパワーシートスイッチですが、今までのようにスイッチが動くのではなく押し込むように触るだけだと思って操作すれば特に違和感はありませんでした。
メーターディスプレイは従前のものでもスタイルが変更できましたが、当然W206では中身も最新のスタイルが適用されています。ただ、スポーツスタイルは妙に気合が入りすぎていたため、試乗中はクラシックスタイルを選んでしまいました。
メーターとハンドルの間には両脇にドライブセレクターとウィンカー/ワイパーのレバーがあり、このレバーも細い新しい世代のものになっています。このレバーを操作するのは初めてでしたが、きちんと剛性感もあって良かったです。
期待はずれだったのが、ハンドルのスポークに設けられた操作スイッチ。新世代ではタッチセンサーとなっただけでなく、よりスイッチを設置できるようダブルスポークになったのですが、走行中だと操作した感触に乏しいのと事前に想像していたものよりも高級感がないのがになりました。
センターコンソールに鎮座する巨大ディスプレイですが、こちらはタッチ式で反応も上々。エアコンの温度設定ぐらいはボタンの方が嬉しいようにも思いますが、これもディスプレイないとなるのは昨今のデザイン上仕方ないのかもしれません。
また、走行モードと音量ボタンがそれぞれ左ハンドルに合わせた位置にあるのは先代モデル同様ですが、高級車なのですからこの辺りは早く左右入れ替えてほしいところですね。
続いて運転席を身長約175cmの自分に合わせた状態で後席に乗り込みます。先代モデルでは少し窮屈さを覚えた後席ですが、ホイールベース延長に合わせてレッグルームは21mm拡大されたのが効いているのか、ゆとりが増しています。FRなのでセンタートンネルはそれなりに盛り上がっているのは仕方ないですね。
後席に座ると拳1つ半強のスペースがある感じでした。
なお、後席用ベンチレーターは前席と異なりイルミネーションはなし。またUSB端子も見当たりませんでした(後席用センターアームレスト内を確認するのを忘れてしまいましたが、どうやらそこにもUSB端子は無い模様)。
ドア周りも前席に比べればシンプルなものの、それでもハンドル周りにはLEDが埋め込まれたプレートが用意され、ウィンドウスイッチ周りも加飾されていて高級感があります。
試乗車はサンルーフ付きでしたので、サンルーフのシェードを開けるとこんなに開放感があります。これで都会のナイトドライブや新緑や紅葉のドライブに行ったら楽しそうですね。
最後にトランク周りがこちら。トランク容量についてはセダンは先代モデルと同じですが、ステーションワゴンでは20L増の490L〜1,510Lとなっています。とはいえ、先代ユーザーとしてはほぼ使い勝手は同じように見受けられました。なお、リアシートは先代同様に4:2:4で分割して倒すことが可能です。
ドライブインプレッション
新型Cクラスのセダンとステーションワゴンでは次の3タイプのエンジンが搭載されていて、全モデルに15kW, 208N・mのハイブリッドモジュール(ISG)が組み合わされています。
- C180:1.5Lガソリンエンジン、125kW, 250N・m
- C200:1.5Lガソリンエンジン、150kW, 300N・m
- C220d:2Lディーゼルエンジン、147kW, 440N・m
試乗車は今年の初めに国内に導入されたC220dのステーションワゴンということで、その出来ばえに期待がかかります。
乗り込むとディスプレイにベンツマークが表示され歓迎されているような気になります。エンジンをスタートし、流れに乗ってドライブするとエンジンはディーゼルとは思えない滑らかさ。メルセデスらしく普通に走っている分にはエンジンは黒子に徹しているのですが、踏み込むとAMGモデルのV8エンジンの鼓動感あるサウンドをそのまま4気筒らしく半分にしたようなサウンドが聞こえて楽しくなります。
また、先代モデルで気になっていたエンジン始動時のショックはISGの制御によって日本のハイブリッドカーのように滑らかになっていて、アイドリングストップからの再始動も全く気になりません。
そして何より驚きなのが乗り心地や運転感覚。剛性感が非常に高いせいか、車全体がコンパクトに感じられます。足回りはスポーティーと言ったレベルで不快な突き上げなどはないのですが、左右に向きを変えても上屋の重さを感じさせず気持ちよく曲がっていきます。
先ほど突き上げはないと書きましたが、かなりレベルが高くて一輪だけからショックを伝えてくるのではなく、ボディー全体で受け止めて姿勢変化は最小に止められていて、正直いま乗っているW213モデルのEクラスワゴンよりも乗り心地は良いように思いました。
カーメディアのレビューを読んでいると、今のところ新型Cクラスでは220dのステーションワゴンのAMGライン仕様が1番バランスが取れているように思えるというコメントもありましたので、Cクラス購入を考えている方は是非このモデルも試乗してもらいたいと思います。
ただ、ISGを搭載しているせいか、停止直前のブレーキフィールが変化したりしなかったりと変化するように感じられ、人によっては気になるかもしれません。むしろ、自動追従で車に勝手に止まってもらうほうが停止直前のショックが少ないようにも感じられました(この辺りの制御は年々良くなってますね)。
価格
Cクラスはセダンが599万円から。ステーションワゴンが625万円からとなっていて、400万円台からだった先代モデルからするとかなり高くなったように感じます。
なお、試乗車は車両価格705万円に、ヘッドアップディスプレイやARナビゲーションが含まれたベーシックパッケージ(15.4万円)、AMGライン(32.6万円)、パノラミックスライディングルーフ(23.3万円)、有償カラーのオプティシアンブラック(9.9万円)が含まれた786万2千円となっていました(その他諸経費を含めると7,948,920円(税込))。
先代モデルとなるCクラス180ステーションワゴンAMGラインは確か600万円前後で購入したので、エンジンの差を考慮しても150万円ほどアップしています。
なかなか手の出せない価格になってきたと感じますが、他社の新車も軒並み価格が上がっているので受け入れるしかないのでしょうね。
また、昨今の半導体不足を受け、現在では新型Cクラスの目玉だったリア・アクスルステアリングが装着不能となっています。
先ほど述べた通り、まだまだモデル差による乗り心地の違いも大きいようですのでもう少し熟成を待ちたいところですが、急激な円安で価格改訂もありそうなので、気に入ったモデルがあれば早めに注文をするほうがいいのかもしれません。
only Mercedes(オンリーメルセデス) 2022年2月号 [雑誌]
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