今年の春にかけて文春オンラインで公開されていた角幡唯介さんの極夜行(現在は第3回までが公開中)。
オンラインでは冒険中に行った出来事のみが記載され、書籍の半分程度の内容になっていると言われていました。
書籍が発刊されてから日が経ってしまいましたが、この暑い8月にようやく北極圏の冬を旅した冒険紀行を読み終えたので、読んだ感想を残しておきます。
書籍のタイトルにもなった「極夜」。
ぷくおは極夜とは一日中太陽が出ない(反対に太陽が一日中沈まないのが白夜)と、極夜を一括りにしていましたが、どうやら極夜にも緯度により様々なバリエーションがあるそうです。
極夜帯の一番緯度が低い場所では太陽が出ないのは1日のみ。そして、何より大事なのは、日本でも太陽が沈んでもしばらくは空が明るいということ。
日本のような中緯度帯では、太陽はゴルフのスイングのように動き、夜の時間帯は地平線のはるか下に沈みます。
しかし、高緯度になるにつれてその動きは水平に近くなり、極夜帯の一番緯度が低い場所では夜になっても太陽が地平線のすぐ下を動くため、太陽こそ出ないものの薄明かりの状態が長く続いて、また日の出を迎えるという動きになるそうです。
つまり、極夜と聞いてイメージしてしまうような、真っ暗な状態が一日中続く世界というのは、かなり高い緯度に行かなければ味わえません。
では、なぜそんな真っ暗な世界を冒険しようと思ったのか。
そもそも、今回の冒険の舞台は人類未踏の地ではありません。というか、本文にも書かれている通り、既に地球上で人類未踏の場所はもうない。
そこで、未踏では無いけれど極夜の中で長期にわたって行動した人はいないこと、さらに角幡さんが過去に読んだ文献で極地に住む人間と、ヨーロッパから新しい航路を開拓する人間が出会った時に現地の人間が発した言葉、さらには過去の人が体験していた「本物の太陽」を感じるため、4ヶ月にもわたる極夜行を考えたそうです。
冒険は一匹の犬とともに暗闇の中、氷河を越え、氷床、ツンドラ地帯を抜け、海に出てさらに北上し、長い極夜の果てに昇る太陽を見る。というもの。
行動中の食料や燃料を複数回に分けて運び込む、現在地を特定するのにGPSではなく六分儀を使う、など、さまざまな準備を重ねて挑んだ極夜の世界。
読み進めると、これらの準備が呪われているかのように次々に無駄になり、計画であればカナダに渡るため、海氷の成長を待って待機する期間に極夜の深淵を行動する羽目になり、さらにスタート地点に戻る時も散々な目にあい、何度も死ぬのでは無いか。と思う場面が出てきます。
そして、旅の果てにある一つの考えを悟ることになります。
本書は極夜という日が昇らない中での探検という、ともすればかなり単調になってしまう冒険記ですが、角幡さんの文章力と、物語を作る月の魔力のおかげであっという間に読み終えることができました。
惜しむらくは本書の中には写真が全く無いところ。
文春オンラインでは写真や動画も公開されていたので、それらがあればいかに困難な旅であったかというのがもっとわかりやすいと思います。
また本人も述べているように、地球上で未踏の地が無くなり、さらに今回の冒険で未踏の世界が無くなってしまうと、今後角幡さんのような冒険者は何を求めて行動するのだろうと少し心配になってしまうぷくおでした。
(本書の中では何度も、いかにこの冒険が未知の世界を行くものだというのが書かれていて、ぷくおとしてはそう何度も言わなくていいのに…と思ってしまいました)
余計な心配は抜きにして、人類が見たこともないような世界を追体験できる(本書では写真が無いので想像になりますが)という意味で、冒険・旅が好きな方なら読んでほしいと思える一冊でした。
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