メルセデス・ベンツが欧州にて待望のフルモデルチェンジ版「新型Cクラス(W206型)」のセダンとステーションワゴンを発表しました。
Cクラスは1982年の登場以来1000万台以上を売り上げている重要モデルで、ぷくおも先代モデル(W205型)を乗っていたこともあり新型Cクラスは気になるところ。
どんな仕上がりになったのか見てみましょう。
新型Cクラスで変わったところ
エクステリア
デザインはメルセデス・ベンツが現在進めている「センシュアルピュリティ(官能的純粋)」というデザイン哲学に基づいていて、特にエクステリアでは極限まで段差やエッジが減らされています。
もっともブランドのデザイン言語なので今回のCクラスに限らず、A、B、E、Sといった他のモデルでも同様のデザイン的手法に従った外観を持っていること。さらに言えば先代Cクラスの後期モデルでも同じデザイン言語に基づいてフェイスリフトを行なっているため、さほど新鮮味が感じられないようにも見えてしまいます。
細かい部分ではさらなる進化を遂げていて、ヘッドランプ内のデザインはより緻密になったほか、写真では分かりにくいですがSクラス同様ヘッドランプ内の下面には細かい四角形が発光するエレメントも。またフロントグリル内のメッシュは「ベンツマーク」になっています。
なお、ヘッドライトにはDLPプロジェクターのように130万画素の細かさで警告記号やガイドラインを路上に描ける革新的なヘッドライト「デジタルライト・システム」もオプションで搭載できるとのことですが、Sクラス同様日本ではまだ搭載できないと思われます。
テールランプはCクラスとして初めて横長の二分割形状。内部はブロック状の発光グラフィックとなっていて、こちらもコストの差による形状の違いはあれどSクラスに似ています。
新型メルセデス・ベンツCクラスのボディサイズはセダンが全長4751mm(従来型比+65)×全幅1820mm(同+10)×全高1438mm(同-9)。ワゴンは全長4751(同+49)×全幅1820(同+10)×全高1455(同-7)mm。広く長くなりつつ低くなったので迫力が増していそうですね。
室内空間や運動性能に大きな影響を与えるホイールベースはセダン・ワゴンとも先代比+25mmとなる2865mmとなります。
インテリア
エクステリア以上に変化が激しいのがインテリア。特にセンターディスプレイが目を引きます。
こちらは9.5インチ(オプションで11.9インチ。ただし日本に入ってくるのは全部11.9インチになるのではないかと思われます)の縦型ディスプレイがセットされています。
ドライバー正面に横長ディスプレイ。センターに縦型ディスプレイという構成は先日発表されたSクラスと同じ構成。
ただしSクラスと異なるのは「ドライバーに向けて”6度”傾けられてセットされていること」で、これはショーファードリブンではなく自らがステアリングを握る機会の多いドライバーズカーであるということからでしょう。
ドライバー正面のディスプレイは、Sクラスでは視差を利用した3D表示が可能になっていたものの、流石にコストの関係からかCクラスへの搭載はされませんでした。
ドライバーディスプレイとセンターのメディアディスプレイは、3種類の表示スタイル(Discreet、Sporty、Classic)と、3種類のモード(Navigation、Assistance、Service)でカスタマイズできるようになっています。
また、中央に3個、左右の1個ずつ設けられている空調吹き出し口は航空機のエンジンから着想を得ています。従来のモデルでもジェットタービンを模した吹き出し口が使われていましたが、新型Cクラスはよりデザインが緻密になり高級感が増していますね。
新型Cクラスにはもちろん最新となる第2世代のMBUXが搭載され、音声やタッチスクリーンによる車両の設定や各種操作が可能。そのため物理スイッチとコントローラーが極端に減らされていますが、ハザードスイッチやボリュームボタンといったダイレクトに操作したい最低限のスイッチが残されているのはメルセデスベンツの良心と言えそうです。
シートデザインも大きく変更され、ハーマンミラーのような軽やかなデザインとなりました。ぷくおが乗っていたW205では長時間乗っていると腰のあたりが重くなったので、新しいシートの出来栄えが気になるところ。
肝心の室内空間ですが、先代に比べてホイールベースが+25mmと拡大された結果、後席の膝周りは35mmも拡大されたのだとか。また、車体幅は10mm幅広になっただけなのに肘周りのスペースは前席が22mm、後席が15mm広くなり、よりくつろげる空間に。
また、それぞれオプションとして運転席にマッサージ機能、後席にシートヒーターがオプション設定されるように。日本だと上級モデルにだけ搭載されそうですね。
トランクはセダンは先代と変わらず455L(VDA)。ステーションワゴンでは先代比+30Lの490-1510Lとなっています。
パワートレイン&先進安全運転支援機能(ADAS)
パワートレイン
新型Cクラスパワートレインの特徴は全て4気筒エンジン+マイルドハイブリッドのISG。そしてトランスミッションは9速の9Gトロニックを採用しているところ。今までのモデルに設定されていた6気筒エンジンが無くなったのは時代の流れなんでしょうね。
ターボチャージャーは新設計となり、メルセデスベンツの開発者とメルセデスAMG F1チームの協力の結果生まれたもので、ターボラグがより小さく瞬時のレスポンスを実現しているのだとか。またオーバーブースト時には27hpのパワーが追加されるそう。
グレードは、ガソリンモデルが170hp・250Nmの1.5リッターターボエンジン搭載の「C180」、204hp・300Nmの1.5リッターターボエンジン搭載の「C200」「C200 4MATIC」、258hp・400Nmの2リッターターボエンジン搭載の「C300」「C300 4MATIC」、ディーゼルモデルが200hp・440Nmの2リッターディーゼルターボエンジン搭載の「C220d」、265hp・550Nmの2リッターディーゼルターボエンジン搭載の「C300d」という構成(欧州仕様)。
なお後日PHEV(プラグインハイブリッド)も登場予定で、129ps・440Nmを発生するモーターと25.4kWhのバッテリーが搭載され、WLTP基準で約100kmのEV走行が可能とのこと。
ADAS
先進安全運転支援機能も最新世代版が採用された。とくに「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック」(自動再発進機能付きのいわゆるアダプティブ・クルーズ・コントロール)は、高速道路/郊外/市街地ごとに設定できるようになったほか、「アクティブ・ステアリング・アシスト」(操舵支援機能)は車速210km/hまで車線を維持。
さらに「トラフィック・サイン・アシスト」(標識認識機能)は、制限速度に加えて、前方の信号や道路工事も認識するようになったそうです。
後輪操舵システム
新型Cクラスのトピックの一つが後輪操舵システムの採用。文字通り後輪も前輪同様舵角がつくシステムで、小回りと機敏性を高める目的で採用されるそう。
60km/h未満ではより小回りが利くように制御、60km/hを以上でフロントタイヤと同じ向きに制御され、高速域では安定性向上につながります(最大2.5度)。
後輪操舵システムを利用すると最小回転直径は43cm短くなり10.64m(最小回転半径は5.32mになるのでしょうか?日欧で基準が異なる可能性があるので参考までに)になるのだとか。
もっともCクラスはもともと小回りが利くことで有名なので、コストのかかるこちらのシステムは小回りの効きにくい4MATICモデルにオプション設定される見込み。
ぷくおの思うところ
いよいよ発表されたW206型Cクラス。一言で感想を述べるなら、後席のゆとりも増えたのならもうEクラスは要らないんじゃない?というぐらいデザインもサイズ(特に室内)も立派になったと思います。
そのデザインですが、欧州車らしく徐々に変化していくデザイン言語により、気がつけば従来のモデルは「やっぱり古いんだな」というのが実感できるよう上手く処理されていると思います。
特に長い時間を過ごすインテリアは、先代モデルでも登場時に1つ上のクラスだと言われるぐらいの質感とデザインだったのが、さらに向上したのが写真からも伝わります。
一方でディスプレイに機能が集約されていくのを快く思わないユーザーも多そう。
ぷくおは新しもの好きなので、ある程度必要な物理スイッチを残しながらディスプレイに集約するのは歓迎ですが、このデザインであればセンターディスプレイは”約6度”傾けなかった方が良かったのにと思ってしまいました。
また、センターパネルからセンターコンソールに繋がるパネルの処理についても、素材の影響もあるのでしょうがそれほど良いものには思えませんでしたし(実車を見たら変わるのかもしれませんが)、先日日本デビューを果たしたSクラスを見ても、異彩を放つボートのデッキのようなデザインのパネルは日本では選べなそうなところも気にかかります。
もうEクラスは要らないんじゃないか?と思える一方で上位モデルと完全に差別化されているのがエンジン。
Cクラスでは全車4気筒エンジンということで、多気筒エンジンの滑らかさを体感できると言うところにEクラス以上の存在価値がありますね。特に現在のSクラス、Eクラス(含むSUVモデル)では完全バランスの直列6気筒が搭載されていますし。
でも多気筒エンジンに興味がない方や、そもそもEVの静かさの方がいいと思う方にとっては、大幅値下げされたテスラのモデル3の方が刺さるかもしれません。
ヨーロッパの高級車市場でもテスラの存在が大きくなっているといいますが、テスラのような新しい形の車を受け入れる層にとっては、逆に新型Cクラスではまだ物足りないと思われるかもしれません。
というか、実際ぷくおだったら新型Cクラスの価格がこれまでと同じだったとしたら、高級感には欠けるものの大幅値引きとなったモデル3を選ぶと思います。
※W205型Cクラスは最安値が489万円ですが、こちらは受注生産になるので実際には530万円のC180 AVANTGARDEからになるのに対し、モデル3はスタンダードモデルが429万円、航続距離の長いロングレンジが499万円。さらに両方ともEVなので40万円の補助金がつくためにさらに価格差が広がる。
果たしてこれからのシェア争いがどうなるのか興味が尽きませんね。
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